赤坂先生・西川先生(赤坂クリニック)血液疾患の在宅医療を支える熱意(3/4)

地域連携について

大橋:
臨時で患者さんから往診の依頼があった場合にはどうされていますか?
赤坂:
血液の患者さんはどうしても急に状態が変化することも多いので、訪問看護ステーションと連携しています。近隣は自院の訪問看護ステーションが対応していますが、すこし距離があるエリアでは、その地域の訪問看護ステーションと連携して診療を行います。
でもそうはいっても往診で対応しなければいけないことも多くて、発熱して夜中に血液培養を取りに行ったり、抗生剤を落としに行ったりということもあります。
訪問看護も呼ばれる回数が多くなってくると、保険点数も減ってしまうので,対応が難しい場合がありますね。先生行って下さいと言われてしまうこともあります(笑)
大橋:
先生方のように重い患者さんが多いと、きっと先生も大変なことになっているのではと思います…。それに、抗生剤を投与する前に血液培養をとって…本当に病棟に近いような形で診療をされているのですね。
当院だとどうしても培養抜きに、まず抗生剤を投与してしまって、ということが多いです。そもそも医療的には重要と思うようなことでも、なかなか多職種の方にその緊急性がわかってもらえないということは多いですよね。
赤坂:
訪問看護さんとの信頼関係を築いていくのは大変でしたね。地域も広いので、新しい訪問看護さんと組むことも多く、その都度いろいろありました。
訪問看護さんは時間どおりに動くじゃないですか。だから時間がずれたりすると迷惑をかけたり、遅い時間や日曜日は動いてもらえなかったりすることもありました。

血液内科中心の訪問診療

大橋:
化学療法をここまで在宅で熱心にやられていたり、患者さんの全体数に対する血液の患者さんの割合は、おそらく日本一だと思います。僕らも200人中20人くらいですし、輸血の月当たりの回数など、全然違いますので。本当に大変だと思います。
我々の場合だと、血液疾患の患者さんについては輸血についても含めて、ある程度採算度外視でやっているところがありますが、まだ全体の数に対する割合が少ないから、ある程度それでも何とかなっていますが、先生方がどのように運用されているのか、本当に興味があります。
赤坂:
我々の診ている血液の患者さんの多くは、予後が短い方が多いので、患者さんの入れ替わりがとても激しいです。だから、基幹病院からの定期的な紹介がないと成り立ちません。紹介先の先生の信頼を裏切らないよう心がけています。
自分が長く診ている患者さんなら電話対応で済ますような用件も、紹介してもらった患者さんの場合は夜間でも顔を見に行くこともあります(笑)
西川:
大変なことも多いですが、赤坂先生の信念なので、そこは血液の患者さんを救いたいという強い気持ちでやっています。
赤坂:
血液の先生は、やっぱり血液の患者さんが好きですよね。私も、その情熱で仕事を続けられています。地域の血液内科のある基幹病院としっかり連携して、定期的に患者さんを紹介してもらうこと。そして、自前の訪問看護ステーションを持ち、PT(理学療法士)がいて、それぞれの職種が頑張ってくれているから、やっていけていると思います。
神戸・京都・大阪・奈良、車で1日に200km以上も走っても8人くらいの患者さんしか診れないこともあります。また定期訪問が夜の10時くらいまでかかることもあります。在宅で血液の患者さんを診ることが好きでないと続けられないと思います。
西川:
救うというのは、命を救うという意味に限ったことではありません。療養型の病院に行ったり、ホスピスに行った場合、輸血ができないことも多いですし、その結果、残された短い時間を苦痛なく過ごすことができない場合も多いのが現実です。よりよい時間を過ごしてもらうためにも、血液内科としての対応が必要なのです。輸血ができないと退院するという話すらできないことが多いですよね。在宅で輸血ができることで、家に帰るという選択肢を示すことができるのです。これを患者さん、御家族、そして世の中の多くの人に知ってもらうことが大事だと思います。
赤坂クリニックのようなところが全国にはなかなかないので、それを知らないままに患者さんは限られた時間を過ごしている場合が多いです。
大橋:
確かに仰る通りだと思います。まずは血液内科の病棟以外に、安心して過ごせる環境を提示できないと、療養場所の選択、という話にもならないですよね。
西川:
最期まで診ることが血液内科はふつうだから、転院をすすめられると、「見捨てられた」と感じて、とても傷つく方が多いです。
我々は、カルテを共有できるシステムにしていて、病棟の主治医の先生も在宅での様子を見ることができるので、併診をすることができるのです。

化学療法の継続

大橋:
血液内科では、化学療法の継続が症状緩和につながるという考え方がやはり強いので、患者さんからも、化学療法の継続を求められることがありますよね?
赤坂:
そうですね。化学療法や輸血が自宅でできれば、患者さんは限られた大切な時間を安心して自宅で家族と過ごすことができると思います。
もちろん状況に応じてですが、Low dose Ara-Cとか、ビダーザとか、内服のスタラシドやハイドレアとか・・・我々は細心の注意を払いながらの患者さんの希望に沿った治療をすることができます。
西川:
このあたりも、わが国全体で地域移行・在宅移行を進めようとしている訳ですから、コストをとれるように、在宅の側にプラスのサポートをしていかないといけないのではと思います。採算が合わないのでは、広がっていかないですよね。赤坂先生は採算度外視でもやっていこうと考えていますけれども。体制から変えていかないと広がらないと思います。