赤坂先生・西川先生(赤坂クリニック)血液疾患の在宅医療を支える熱意(2/4)

血液疾患の訪問診療について

大橋:
血液疾患の患者さんとしては、ご病気としてはどういった方が多いですか?
赤坂:
在宅で診ている血液疾患では、骨髄異形成症候群が一番多くて、次いで多発性骨髄腫の患者さんが続きます。骨髄腫の患者さんはADLが低下し、外来通院が困難になるケースが多いためだと思います。白血病の終末期の患者さんや、リンパ腫の方もいらっしゃいます。
大橋:
疾患の分布としては、我々のクリニックも同じような感じです。悪性リンパ腫の方は造血幹細胞移植を受けた方以外は、比較的固形癌に近い形で症状緩和含めて対応できる
ことが多いように思いますので、一般のクリニックさんで診ているのかなと思っています。
先生のクリニックでは血液疾患の患者さんはどのくらいいらっしゃるのですか?
赤坂:
訪問診療で診ている患者さん170人のうち、約70人が血液疾患の患者さんです。
大橋:
それはすごい数ですね!我々の所でも10-20%くらいで、それでもかなり多い方だと思いますが、先生のクリニックは特別ですね…!
これだけ血液内科の患者さんが多いということは、先生が往診をされているエリアは広いですか?
西川:
赤坂先生は関西医大(大阪府枚方市)の血液内科とも連携して在宅診療を行っているので、大阪まで行って輸血するようなこともあるようです。神戸だけで言えばそこまで多くないのですが、関西医大は新患患者数が全国でもトップレベルですから、それだけ紹介も多くなります。今、訪問している血液患者さんの内訳でも、大阪の患者さんが30人、残り40人くらいが神戸にお住まいの患者さんです。
大橋:
医師の診療体制としてはどのようにされているのですか?
赤坂:
血液内科医が7名います。常勤医は私だけで、大学病院の先生方や大学院生、子育てや親御さんの介護をされている女医さんもおられます。みんなで協力しながら、月に150件程度の在宅輸血を行っています。
大橋:
我々のクリニックの5倍以上ですね、おそらく全国でも一番多い数ではないかと…。
我々のクリニックでも、血液疾患の患者さんが増えて、輸血が増えてくると、正直なところ経営的にもマンパワー的にも、かなり負担がかかる部分もあるのですが、先生のところではいかがですか?これだけ血液疾患の患者さんが多くを占めて、クリニックが運営できるっていうことですよね…。
赤坂:
本当にぎりぎりでやっています(笑)。神戸市内には癌のターミナルを診るクリニックがいくつかあり、多くの非血液がんの患者さんは特定のクリニックに紹介されているようです。一方、血液患者さんを診るクリニックは無いので無競争です(笑)
西川:
往診でレブラミドの処方に困ることがあります。登録している外来患者さんには処方できるのですが、訪問診療の場合は院内処方がクリニック負担になってしまうので高額な薬剤は処方しづらいことがあります。
大橋:
これだけ化学療法も積極的にやられているクリニックですら、処方が難しいんですね。そもそも在宅で対応されることが制度的に想定していない部分もありますよね。
西川:
以前、赤坂先生は神鋼病院の外来もされていたので、そこで出すこともできたのですが、在宅ではやはり制限があります。抗がん剤によっては医療機関での投与でないと使えないケースもあり、製薬会社とも相談して、何とか患者さんの願いに応えられるように対応しています。
大橋:
地域の調剤薬局で化学療法について協力しているところはありますか?我々の周りではクリーン・ベンチのある薬局など、化学療法をサポートしようというところもあります。
西川:
病院で十分経験を積んだ医師が診療を行っていますので、基本的に自院で調剤しています。外来でリツキサンの投与をすることがありますが、必要性が高ければ、紹介先病院で投与歴がある患者さんに限って、十分注意を払いながら在宅で行うこともあります。
その他、皮下注レベルの抗がん剤や点滴の抗生剤、G-CSF製剤やエリスロポエチンなども在宅で行うことがあります。