翁 祖誠先生 インタビュー(1/3)地域で血液疾患患者を診ていく体制づくり

やぐちメディカルクリニックの翁 祖誠先生に、地域で血液疾患患者を診ていく体制づくり、外来と在宅で化学療法を実施するための病院との連携ややりがい、今後の抱負について、お話を伺いました。

翁 祖誠(おきな そせい)先生

やぐちメディカルクリニック(所在地:神奈川県相模原市南区上鶴間本町1丁目38-30 小林ビル4階)常勤医師 
血液専門医・指導医 総合内科専門医・指導医

<略歴>

2005年3月 北里大学医学部卒業 
2005年4月~2007年3月 北里大学病院にて初期研修
2007年4月 北里大学血液内科学入局
2007年4月~2008年8月 東京厚生年金病院血液内科 出向
2011年4月~2013年3月 相模野病院血液内科 出向
2016年3月 北里大学大学院博士課程修了 
2017年1月 北里大学血液内科学 診療講師
2022年10月 やぐちメディカルクリニック 出向

地域で血液疾患患者を診ていく体制づくり

――まずは血液内科医を目指されたきっかけを教えてください

 学生の頃は内科がいいな、とだけ考えていました。大学の血液学の講義を面白いと思ったことが、初期研修で血液を選択するきっかけになりました。実際に急性白血病の患者さんを担当し、本当にテレビドラマでみるような経験をさせて頂きました。幸いにも治療がうまくいき、自分にとっても大きな喜びであったことが、血液内科を志望する大きな理由になったと思います。その後の臨床経験の中で、ターミナルケアの重要さも知り、訪問診療で血液疾患をみていくという現在のコンセプトの原点になっていると思います。

――現在も病院の外来勤務をされながら、やぐちメディカルクリニックで勤務されている翁先生。ご開業のきっかけはどんなことですか?

 相模原市に加え、周辺のエリアに血液内科の病院がほとんどないのです。1つの大学病院だけで130 万人くらいのエリアをみているような状態が10年以上続いていました。落ち着いている患者さんであっても、血液の病気は専門性が高く、「輸血が大変」などの理由で、地域の受け皿になってくれる診療所・病院はありませんでした。ですから入院も長期化してしまい、ベッド不足から緊急入院に対応することが難しい状況でした。悪循環が続く中、医師も疲弊していました。なんとかならないかと常々思っていたのですが、自分で血液内科のクリニックを立ち上げて、基幹病院とクリニック・訪問診療などの交通整理をしていく形が一番スムーズなのではないかと考えました。構想を教授・医局員ともしっかりと共有し、開業の方向性を決めました。実際に大学病院における平均在院数の短縮や、緊急入院の対応が大幅に改善され、ご支援いただいた皆様に大変感謝しております。

――細かい指示にも対応できる、大学病院と密な連携が重要。連携で工夫しているとことや難しい点はありますか?

 これまで転院調整はとても時間がかかり、大変ストレスな作業だという認識が少なからずあったと思います。私は大学病院で外来を行っていますが、逆に病院からは当院の外来や往診に医師を派遣してもらっており、お互いの状況もよく知ることができています。当院の看護師ともface to faceで話し合える状態です。診療情報提供書では伝えきれないことや、細かい指示変更などにも対応することができる関係性が築けていると思います。