女性の血液内科の先生方へ「地域で血液内科医として活躍する道を知ってほしい」
――地域に出てみてから瀧本先生は、血液内科医としての地域での役割をどのように感じていますか?
私は病院で15年以上血液内科医としてのキャリアを積んできました。ですから他の内科出身の先生方のように、超音波や内視鏡を使った検査技術が強みではありません。
地域の診療所でできることとしたら、やはり他の専門の先生方が診ることのなかった血液疾患を診ること。それに血液疾患を診れることを強みにしなければ、私自身のこれまでのキャリアが無駄になってしまいます。
しかも血液内科医は医療施設に従事する医師31万人のうち、たった1%です。希少価値が高いからこそ、多くの先生方ができることに取り組むのではなく、1%にしかできないことをやらなければ宝の持ち腐れになってしまうのではないかと思います。
――1%には1%のできることを。地域にいる血液内科医にとって、とても励みになる言葉のように感じます。
とりわけ女性の血液内科医の多くは、やはり体力面やライフプランとの兼ね合いで、病棟の最前線に立ち続けることの難しさを感じていらっしゃいます。約15年病院に勤務する中で、やはり女性の血液内科医は、比較的早い段階で病院から離れていかれるのを見てきました。
そして病院を離れた女性の血液内科医の多くは、一般内科として活動されています。でも先ほども言ったように、それまで積み上げてきた血液内科のキャリアを失うのは非常にもったいないと思うのです。
せっかく長い時間をかけ、苦労して学んできた専門ですし、そもそも希少な存在なので、セカンドキャリアで地域に出ても、血液内科医として活動する道があることを知ってもらいたいですね。そういったキャリアプランがあることを、私は示していきたいです。
川崎市で血液内科医ネットワークづくりを
――今後の目標について教えてください。
当院ではまだ在宅輸血を始めて1年ほどしか経っておらず、また実績もまだ少ないので、まずは在宅輸血に関して、安全に安定的に進めていけるよう体制を整えていきたいと思っています。あと私は緩和医療認定医でもあるので、血液疾患以外の患者さんでも、終末期をご自宅で過ごしたい方の受け皿になれるよう、できる手技を増やしたり、地域の医療・介護施設との連携も強化していきたいと思っています。
また現在、聖マリアンナ医科大学血液内科の新井文子教授が、川崎市における血液内科医ネットワークを構想されています。地域のCommunity Hematologistとしてそのネットワークの立ち上げも期待されているので、地域にいらっしゃる血液内科の先生方と、徐々に顔の見える関係性を作っていき、ネットワークを広げていきたいと考えています。
病院から血液疾患の患者さんを地域に帰したいと思っても、そもそも、どこに血液疾患を診られる医師がいるのかが分からないので、ご紹介したくてもできないのが現状です。 ですから二人主治医性の導入や、軽症や安定している患者さんは地域で、重症の患者さんは大学病院で診るような連携体制を整えていきたいと思います。
それこそ、その他の疾患の多くは、地域の医師と病院の医師が連携しながら患者さんを診ています。血液疾患は非常に高い専門性がありますが、他の疾患と同じような連携を目指していきたいですね。
(インタビュー・文:北森 悦)